スピーチの達人に学べ!
アメリカvsイギリス
リーダーの英語
書籍 A5判 204ページ
本体価格2000円+税
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中級~ |
■英米のスピーチの達人に学ぶ!■
「重要なメッセージは文書に落とせ」と言われ続け、表意文字である漢字を駆使する日本人と、小学校から国語の時間にスピーチを学ぶアメリカ人との間には、「英語」の壁に加えて、「パブリック・スピーキング」という大きな壁が存在します。大勢の人間を前にしたスピーチやプレゼンのみならず、ビジネスの交渉の場においても、相手の話のポイントを正しくつかみ、自分の考えを明確に相手に伝えるスキルは必須です。
どうすれば人を説得し、動かすことができるのか。英米の要人のスピーチは、そのための最高の生きた教材です。本書では、英米のリーダーたちの名スピーチをずらりと揃え、NHKやCNNで同時通訳者としても活躍する東京外国語大学の鶴田教授と、海外勤務15年に及ぶみずほ証券英国現地法人の柴田氏が、それぞれの専門的立場からコーチします。
■アメリカとイギリスのスピーチを聞き比べる■
CDに収録したスピーチは、ケネディ大統領が冷戦下の西ベルリンで、20万人の聴衆に自由主義の大切さを訴えたスピーチ、サッチャー首相のフォークランド紛争勃発の日のスピーチなど、時代をつくってきた感慨深いものばかり。聞き応え十分のラインナップです。
説得力のある話し方、情感に訴える話し方といったテーマ別に、アメリカとイギリスのスピーチを比較しながら、パブリック・スピーキングの要諦を学びます。
■シャドーイングの素材としても最適■
まさにパブリック・スピーキングのお手本といえる英米トップのスピーチは、シャドーイングの練習素材としてもぴったりです。間の取り方、強調のための繰り返し、声の音量や音域の使い方、スピードの緩急まで、正確に聞き取りながら真似して口に出し、自分のものとして体得しましょう。
【本書の内容】
Chapter1【スピーチの構成と書き方】
即興スピーチとスピーチ原稿付きスピーチの比較
●マーガレット・サッチャー首相:首相就任の即興スピーチ
●ジョン・F・ケネディ大統領:私はベルリン市民である
Chapter2 【話し方と話法】
ユーモアの盛り込み方、プレゼンテーションの仕方
●エリザベス女王:クリスマスのメッセージ
(エリザベス女王の音声のみ、CD未収録。テキスト学習となります)
●バーバラ・ブッシュ大統領夫人:ウェルズリー大学の卒業式のスピーチ
Chapter3 【説明責任を果たすスピーチ】
アメリカとイギリスにおけるスピーチの位置付け
●ジョージ・W・ブッシュ大統領:2005年の一般教書演説
●トニー・ブレア首相:2005年の首相就任演説
Chapter4【説得力のあるスピーチ】
聴衆を説得する具体的手法と、聞き手のあるべきスタンス
●ロナルド・レーガン大統領:ブランデンブルク門のスピーチ
●マーガレット・サッチャー首相:フォークランド紛争勃発の日に
Chapter5【情感にあふれるスピーチ】
聴衆の感情にどう訴えるか
●ロビン・クック下院院内総務:イラク戦争に反対して辞任するときのスピーチ
●ヒラリー・クリントン上院議員:母校ウェルズリー大学125周年記念スピーチ
補章【専門的な内容のスピーチ】
経済・金融を例にした専門性の高い内容のスピーチの攻略
●アラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長:経済シンポジウム閉会の辞
●ゴードン・ブラウン財務相:予算演説
(両名の音声はVOAニュースから収録しています)
鶴田知佳子先生[東京外国語大学教授、放送通訳者]
まず、自己紹介を。
鶴田知佳子です。東京外国語大学で通訳を教えています。現役の会議通訳者、放送通訳者でもあります。同時通訳は知的に刺激を受ける面白さに満ちていますが、常にどこまで話者のいわんとすることを正確に伝えることができるか、への挑戦です。終わるたびに反省することしきり。そのいったんは、「同時通訳の現場から」のメルマガ、また私の通訳日誌でもご紹介しているとおりです。
本書の中で読者に一番訴えたかったポイントは?
スピーチのもつ力です。ひとつのスピーチが歴史を変えた、ということもあります。それぞれの人が自分の個性をにじませながら、どのように聴衆とコミュニケーションをはかっていくのか、それぞれの場面ごとに味わっていただけたらと思います。そのほか、ユーモアを盛り込むことを忘れずに、話し方に工夫をするといったことでのスピーチの楽しさも感じて頂けたらと思います。
鶴田先生ご自身が本書の中で一番気に入っているスピーチは?
バーバラ・ブッシュ夫人のウェルズリー大学卒業式でのスピーチです。このスピーチは、ほかのスピーチの教科書にも多くとりあげられていますが、夫人の暖かい人柄がじんと伝わってきます。ユーモアにもあふれています。人生は楽しいものだ、自分のやりたいことをなしとげることこそが大事、というのは卒業していく女子学生に対する最高のはなむけの言葉です。
先生が英語力をつけたいという学生に最もお勧めしている学習法は?
学習法というわけではないですが、目標を決めて学習をするのがいちばんだと思います。よく「英語がうまくなりたいんですが、どうしたらいいでしょう?」という相談を受けますが、なにごともそうであるように、何をしたいのかが先にあってその目標に向かっていくという姿勢が大事だと思います。たとえば、日常会話ができるようになりたい、というのであれば、実際に自分でこういう場面でこういう話をしたい、という想定をして話す練習をしてみることです。
ベッカムがあるテレビのインタビューで答えた印象的な言葉ですが、どうやったらサッカーがうまくなるか、の答えは「練習、練習」でした。スポーツでも楽器の演奏でもそうだと思いますが、実力は反復練習の結果、鍛えられ身につきます。しかし、その反復練習ができるか、できないかで実力がつくかつかないか、が決まります。反復練習を本当にやり抜きたいという意欲をもてるのは、目標があるから、つらいばかりでなく楽しいと思いながら勉強できるのも、「あの山に登りたい」という目標があるからだと思います。上れたときの喜びは格別です。
通訳の仕事の上でもよくいうことなのですが、知力、気力、体力が必要です。心身共に健康でないといい仕事はできませんが、知力を支えるのがやり抜こうという気力、気力を支えるのが体力でしょう。私はよく「どうしてそ
んなに元気なんですか」という質問を受けるのですが(笑)、やりたいことがあるからでしょう。やりたいことをするには、知力(能力)もさることながら気力と体力が必要ですね。
そうそう、もう一言。これを達成したいという目標を目指して「山に登る」前に自分がいま、どのあたりまで上っているのか、という正確な自己評価を忘れずに。
柴田真一[みずほ証券英国現地法人Exective
Director]
まず、自己紹介を。
柴田真一です。日系金融機関の駐在員としてロンドンで働いています。在英10年、前任地のドイツも含めるとほぼ15年になります。
仕事で異なる国々の多種多様な英語に接し、われわれ日本人としてのアイデンティティを持った英語はどうあるべきかを日々考えています。
本書の中で読者に一番訴えたかったポイントは?
スピーチで最も重要なことは、聴衆とのコミュニケーション。つまり、相手の心に響くにはどうしたらいいかを考えることです。
スピーチとかディベートとか聞くと、自分には関係ないと感じる方が多いと思いますが、実は、日常生活や仕事における意思疎通の延長線上にあるもの。歴史的な名スピーチというお手本中のお手本から、そのエッセンスを学んでいただき、英語のコミュニケーション力向上に役立ててほしいと思います。
柴田さんご自身が本書の中で一番気に入っているスピーチは?
冒頭にあるサッチャー首相の就任演説でしょうか。彼女の強い意志や国・国民を想う熱い気持ちが短いスピーチの中に凝縮されているうえ、抑揚、間の取り方が絶妙。心にジーンと迫ってくる語り口ですね。
柴田さんご自身は、どのようにして現場で通用する英語力を磨いてこ
られましたか? 一番効果のあった学習法は?
英語力の基本は読解力と作文力。読んでわからないものはいくら聞いてもわからないし、いい文章が書けなければ、相手が興味を持つような話はできない。
そのために、読解力は英字新聞の社説を読み、作文力は、テーマを決めてボキャビルをやり、自分の表現したいことを文章にしていきました。ひとつのテーマで最低10分くらいは語れるようにする。そうすると、英語力と雑学が一石二鳥で身につくんですね。
その実践編として、相手と話をするとき、ひとつのテーマについてできるだけ長くしゃべってみるよう心掛けました。これは自分の知識や表現力不足が露呈されるので、辛い修行(?)です。
TPO次第では、恥は掻き捨て、という訳にはいきませんが、恥をかいたり、冷や汗をかく経験を積むのが、一番体に染みこみますね。そして、後で知識を補ったり、表現を調べたり、という作業を地道にやっていく。相手に、あいつはなかなか面白いやつだ、と思われるよう、日夜努力しています。
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