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59白井:文法訳読を擁護しているような勢力があるではないですか。そういう人はメタ知識を教えたがるんですよ。自分はそれでしか教わってきていないし、言語学者は文法が大好きなので、そういう人たちは、言語に「つ....

59白井:文法訳読を擁護しているような勢力があるではないですか。そういう人はメタ知識を教えたがるんですよ。自分はそれでしか教わってきていないし、言語学者は文法が大好きなので、そういう人たちは、言語に「ついて」いろいろ教えたい、それが子どもにとっての幸せだと思っている。そうではなくて、子どもにとって大事なのは英語が使えることであるという観点に立ってやっていくことでしょう。英語教師でも文法大好きな人が多いので、それを教えることに喜びを感じる人が多い。文法ってのは理屈をしらなくても、使い方さえわかればいいのだということがわかっていないのです。 世界的にはコミュニカティブアプローチということで、最初から言語をコミュニケーションの道具として使っていくという方向なのに、いまだに日本では、メタ知識、つまり、言語に「ついて」説明するような知識を教えたがる、などということを言っている。吉田:言葉はそれ自体が目的化されてしまうものではないと思う。「何かを達成するための道具」だという根本的な認識をもたないと。田中:僕は、「英語道具論」については、言語はそんなに単純なものじゃないという思いがあって、だいぶ躊躇があったけど、今は割り切るしかないと思っている。 頭に浮かぶのは、1960年代に Wilga Rivers が言った、skill-getting と skillusingという言葉。Rivers はあえて skill という言葉を使ったのだと思う。knowledge ではなく skill にこだわったところがスゴイ。しかし、Rivers は、最初は、skill-getting をある程度やったところで、skill-using を鍛えていくという発想だったけど、 80年代になって、それは間違っていたと認めている。そうではなく、外国語学習の初日から skill-using をやらなければならないという見解に変わった。僕も彼女が日本に来られたときに直接お話ししたことがあるけれども、外国語教育にはまさ白井恭弘(しらい やすひろ)ケースウエスタンリザーブ大学現代語・文学科長・教授(Eirik Borve Chair)高校教師を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程(英語教授法専攻)、同博士課程(応用言語学専攻)修了。応用言語学Ph.D.。アメリカ・コーネル大学現代語学科助教授、同アジア研究学科准教授(tenured)、香港中文大学日本語研究学科客員教授、ピッツバーグ大学言語学科教授などを経て現職。言語科学会(JSLS)前会長。専攻は言語学(テンス・アスペクト)、言語習得論。SLA(第二言語習得論)の観点から外国語教育のあり方に提言を続けている。主な著書:『外国語学習の科学?第二言語習得論とは何か』(岩波新書)、『ことばの力学?応用言語学への招待』(岩波新書)、『耳からマスター!しゃべる英文法』(コスモピア)、『英語教師のための第二言語習得論入門』(大修館書店)、『英語はもっと科学的に学習しよう』(中経出版)、『言語はどのように学ばれるか』(共訳、岩波書店)など。冒険的精神をもって英語を使おう