ブックタイトル英語で語ろう!私たちの昭和、平成そして令和_試し読み

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英語で語ろう!私たちの昭和、平成そして令和_試し読み

16アメリカでの婦人参政権の確立は1920 年 2019 年2 月、アメリカ連邦議会に民主党の女性議員たちが白装束で集まった。女性蔑視のトランプ大統領による年初の一般教書演説(State of the Union Address)に抗議の意志を示すためだ。白い服はかつてsuffragist のシンボルだったという。   Suffragist. 今ではあまり耳にしない言葉だが、20 世紀初頭に女性の参政権を求めて闘った人たちを指す。婦人参政権運動の原点は1848 年の Declaration ofSentiments(所感の宣言)にあるとされる。それはアメリカ独立宣言の精神にもとづいて、女にも男と対等な基本的権利があると明記した文書で、そうした権利のなかに参政権も含まれていた。当時、ニューヨーク州セネカフォールズ(Seneca Falls)でこの宣言に署名したのは女性68 人と男性32 人。その後の長い闘いを経て、ようやくアメリカで婦人参政権が確立されたのは1920 年(イギリスでは1918 年)のことだ。邪魔されて民主主義が負けることもある 日本にも、明治の自由民権運動や大正デモクラシーの時代から同様な動きがあった。しかし婦人参政権の実現は敗戦と新憲法の制定を待たねばならなかった。戦後の1948 年に当時の文部省が作成した教科書『民主主義』によれば、大正の終わり「ころまでは民主主義の方向に発達してきた政治の動き」が、昭和の時代に入ると「軍国主義や独裁政治の邪道に脱線してしまった」からだ(この本については思想家の内田樹が角川文庫版の解説で「今読んでも胸をつかれるように本質的な洞察に満ちている」と評している)。 そんな「邪道に脱線」していなければ、日本も昭和の初めごろ(1920 年代の後半)に婦人参政権を獲得できていたかもしれない。しかし democracy(民主主義)は私たちが自らの手で勝ち取るべきものであり、その闘いは往々にして「軍国主義や独裁政治」に邪魔される。邪魔されて民主主義(を求める側)が負けることもある。そういうリスクを、70 年前の官製教科書が指摘していた。その事実を覚えておきたいと、私は思う。文・沢田 博 (ジャーナリスト 『ニューズウィーク』日本版・元編集長)監視資本主義の台頭、資本主義見直し論??民主主義の窒息は進むのか?民主主義