ブックタイトル多聴多読マガジン Vol.62 2017年06月号 試読

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多聴多読マガジン Vol.62 2017年06月号 試読

2017 JUNE 11特集 100万語シャドーイング  ここでは①インプット効果の次に出現すると考えられる、②のプラクティス効果について説明します。 みなさんは人の名前や英単語を覚えようとするときにはどうしますか? 通常はそれを、心の中でくり返し言ってみますよね。「いや、私は書いて覚えます」と言う方でも、書くと同時に例外なく発音しているはずです。認知心理学では、ことばの情報はいったんワーキングメモリ内の音韻ループに保存され、内的リハーサル*(内語反復)することで、ほぼ永久に蓄える長期記憶に転送されることが明らかになっています。 つまり、ことばのインプットは、聴覚・視覚別にそれぞれの感覚記憶にいったん保持されますが、その後、ワーキングメモリの音韻ループに転送・保持されます。音韻ループは、音声による保存庫で、内的な音声リハーサルにより、情報を保持する機構です。忘れないように記憶しようとする意識を持ちながら、心の中で音声反復するという操作を経て、最終的に長期記憶に転送されるのです。 シャドーイングは、この新情報のリハーサルを、心の中ではなく、外的に声に出して、「顕けん在ざい化か 」した形で行うタスクです。誰しもが持っている、新しいことばをそのまま内的にくり返すという記憶・学習の操作を、ハッキリと目に見える形で実現してくれます。 事実、シャドーイングのトレーニングを、いくつかの英語パラグラフをもとに行うだけでも、声に出して発音するスピードが上がるだけでなく、心内の音声リハーサルが高速化・効率化して、学習能力が向上することが、シャドーイングの脳科学研究で明らかになっています。これが、シャドーイングのプラクティス効果です。*リハーサルには情報を機械的に反復する維持リハーサルと、既知の様々な情報・知識との関連づけや、位置づけを行う精緻化リハーサルのふたつがあります。「維持リハーサル」は、単に必要な情報を必要期間とどめておくだけのもので、将来活用する必要はありません。これに対し、「精緻化リハーサル」は記憶・学習して長期記憶に転送するためのリハーサルで、私たちの記憶・学習を支えているのはこのメカニズムです。心の中でくり返し音に出し、リハーサルすることで、言語インプットを長期記憶として定着させることができる。リハーサルを行うことで、記憶は定着する数百ミリ秒(視覚)数秒(聴覚)感覚記憶20 秒程度短期記憶ほぼ永久長期記憶時間の経過くり返し… 知識や思い出