ブックタイトル多聴多読マガジン Vol.55 2016年04月号 試読
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多聴多読マガジン Vol.55 2016年04月号 試読
特集?今こそ、英語多読c iStockphoto /DrAfter123 c iStockphoto /VLADGRIN▲右脳が感性を司り、左脳が論理的思考を司るという俗説は、現在の研究では完全に否定されている。実際には脳は知覚情報の処理、記憶の蓄積、未来の予測、意味の認識といった活動をすべて同一ネットワーク上で行っているのである。物語と予知:我々の脳は予知マシーンである最後に物語とは、絶えざる事件の連続、原因と結果の集合体であります。そして神経科学の観点から言って、脳とは予知マシーンなのです。ハーバード大学のDaniel Schacterによると、記憶の唯一の目的とは「次に起こることを予想すること」だそうです。我々が細かいことをいちいち覚えないのもこのためです。確かに要点がまとめられた記憶は、多くのことを正確に記憶することよりも、将来を予知するのに向いているでしょう。脳は原因を探り、結果を予想するシミュレーション機械なのです。私たち神経学者は長い間、疑問に思ってきました。私たちの脳には、記憶を保管しておく陳列棚があるのか?それとも記憶とは、古い映画や写真の集合体のようなものなのか?言語に関して言えば、聞こえてきたすべての単語を定義するのに使う、内的な辞書のようなものを私たちは持っているのか?答えはすべてNOです。知覚情報の処理、記憶の蓄積、次に起こることの予想、そして言語から意味を見出すこと。我々の脳はこうした処理をすべて同一のネットワーク上で行っていることが最新の研究でわかっています。最新の研究によると、我々の脳は原因と結果をシミュレーションするマシーンであり、さらにそれは我々が世界を認識し、五感を司る脳の感覚野に依存していることがわかっています。ここまで来れば、説明的な講義形式よりも物話形式のほうが我々の脳と相性がいい理由は明白でしょう。なぜならナラティブな物語とは即ち、原因と結果の集合体に他ならず、また物語とは五感に訴えるものだからです。対照的に、我々が説明を読んだときは、それを脳にとって受け入れやすい物語的な原因と結果のフォーマットに変換してやる労力が必要になってきます。つまり、その説明が何を意味するのかを視覚化し、自分のこれまでの経験と照らし合わせて意味づける必要が出てくるのです。(参考文献)Schacter, D. L. (2012) Adaptive constructiveprocesses and the future of memory, AmericanPsychologist, 67(8), 603.37